はじめに

 

 

 

館学構想の全体像の提示を試みたので,本書では彼の人間像の再現を第一とし,

図書館学の理論や方法については,その後に入手できた資料で補論するように

努める

7)

 

 シュレッティンガーの修道院時代は,

『図書館史研究』発表論文をもとに,そ

の後に入手した修道院世俗化関係の資料で補って加筆する。バイエルン宮廷図

書館員の時代は,主としてシュレッティンガーが書き綴った日記によりながら

記述する。図書館学の著作に関する考察は,著作の成立経過などに力をいれ,

書簡も個別にみながら,議論の展開の実像を追うことにしたい。

 

 本書のもっとも重要な原資料は,

1793年から1850年まで57年間書き綴ら

れた彼の日記である。本書で引用ないし参照するときは,本文中に日記の年月

日をカッコにいれて付記する(例

 : 1793.6.24。ただし1800年代の年は下2ケ

タだけとする。例

 : 02.12.3)。 

本書がシュレッティンガーという人物と,ドイツ図書館学の形成期に関心を

もつ方々に参考になるところがあれば,幸いである。

 

なお,今年はシュレッティンガー生誕

240年にあたる。この記念すべき年に

本書が上梓されることをよろこびたい。

 

2012年5月 

大島にて 河井弘志